「なんでもないこと,ないでしょ」



凪がゆっくり近づいてくる。

自分でも分からないこと,説明したくない。



「なんでもないから,来ないで」



私は凪が近づく分だけ小さくなった。 



「なんで?」



とうとう目の前まで凪がやってきて,ベッドに片足をつく。

私は何故かひどく緊張して,痛くなるくらい目をつむった。

ーポンッ

はっと目を開けると,凪が私の頭を撫でている。

髪の毛をなぞるみたいして,ゆっくりと。

私は深呼吸をして,ぱちぱちと目を瞬かせた。



『お嫁さんって良い響きだよね』



昨日の,凪の言葉が重なる。

ーかぁぁあぁっ

なんで…今っ…

昨日,聞き流したはずだった。
なんとも思ってないはずだった。

でも,そんなこと,出来るはずなかった。