「真理は,温かいね」
私が悩みながら口をパクパクしていると,凪が小さな声でそう言う。
分かってる。
凪は夜だから声を潜めただけで,決して囁くつもりだった訳じゃないこと。
でも,イケメンイケボの凪なら,いっそ普通にしゃべって欲しい。
それに……
いっつも体温高いのは,凪の方じゃん…
私はそんな風に思った。
頬に凪の胸が当たって,とくとくと心音が聞こえる。
どうしよもなく,恥ずかしかった。
やがて,耳に響くそれが,どちらのものかも分からなくなる。
どくん。どくん。どきん。
ばくばく,どきどき。
少し息を吸えば凪の匂いがして,私はぎゅっと目をつむった。
そしたら案外眠気はやってくるもので,私は目に込めた力をふっと緩める。
「真理,僕だって,分かってるけど。だけど,僕はわがままだから……自分で気付いて欲しいんだよ」
?
誰かが,私の頭を撫でた。
私は,その手の持ち主を,知っている気がした。
ふわふわする。
なんか,どきどきする。



