溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。




「な…」

「もちろん何にもしない」

「分かってるよ!」



私はわっと声をあげる。



「そっか」



凪はそれだけ言って,私を解放した。

もういいやって,充分だって言われたみたいで,私はどこか悲しくてイライラする。

もしかしたら,悲しいじゃなくて,寂しいだったかもしれない。

勝手に諦めないでよ! 私を決めつけないで。

心だけが,叫んだ。



「…いいよ。添い寝くらい,べつに」



ただの勢いだった。

それでも口にしたことに,後悔はない。

凪を見上げた私。

その先にいる凪は,自分で言い出したくせにひどく驚いていた。

いい気味だ。

私は少しの照れを隠して,凪の袖を引く。

ーこれ以上立ち止まっていられると,私が正気に戻ってしまう。