溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。

「言うほど短くないでしょ,もぅ」



凪は仕方ないなとでもいうような顔と声で言うと,軽く笑う。

そして何処かへ言ってしまった。

お風呂かな。

その可能性を考えると,ついていくべきか迷う。

かと思えば直ぐにドライヤーを持って戻って来た。

そのまま凪はゆったりとソファーに腰かけ,足の間に空間を作る。



「凪?」



そして,その場所をポンポンと手で叩いて見せた。

座れってこと?

私が迷っていると



「おいで?」



と,凪は両手を広げて私を誘った。

凪にそう言われて,わざわざ断る私でもなく,私は言われるままに近寄る。

ポスッとソファーにお尻をつければ,いつもより凪が大きく見えた。



「じっとしててね」



凪はやさしくそう言って,ドライヤーのコンセントを差す。

やがてブローッと音がして,私の髪の毛が一方向に流れた。

私の髪の毛をとく凪の指が,私の耳たぶに触れる。


「ふふぁっ」

「真理?」



私がビクッと背筋を伸ばすと,凪はドライヤーの電源を切って私の顔を覗き込んだ。