「凪,あがったよ」
私はリビングの扉を開けながら,凪に声をかけた。
ソファーに座ってテレビを見ていた凪は,返事をしながら体を私の方へと捻る。
そして一瞬だけ目を剥いた。
どうしたんだろう?
私が首を捻ると,凪は私に手招きをする。
私はそれにしたがって,足を前に進めた。
「凪?」
私がどうしたのかと凪に屈んで問いかけると,凪は私の首にかかっているバスタオルを取り上げる。
どうするのかな。
黙って見つめていると,凪はバスタオルを大きく広げて私の頭に被せ,わしゃわしゃと髪の毛を混ぜた。
わっ。
私は心の中でびっくりする。
「真理,髪はちゃんと乾かさなきゃ」
「んむっ…大っ丈夫だよ。短いしすぐ乾く」
まるでお父さんみたいなことをいう凪に,頭をわしゃわしゃぐわぐわ揺らされながら,私は答えた。



