溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。



今日は…

いつもと同じようで,全く違った。

どの時間にもお母さんがいなくて,凪とずっとふたりきりだった。

このあとも,凪がいる。
今日はずっと,ふたりきり。

そう思うともぞもぞして,頬に力が入る。

私は鼻まで湯船に浸けた。

何なんだろう,これ。

少しだけ鼻からでた空気で,水面がぽこぽことおとをたてる。

凪はいつも他の人とは違うけど,小さい頃はここまでじゃなかった。

もう,なんなの…

知りたい。知りたくない。
天秤が,ぐらぐら。頭が,ぐるぐる。

答えが出ないまま,出さないまま,気付けば時間がそこそこ経っていて,私は考えることを放棄して浴室を出る。

長湯しすぎて,頭がくらくらした。

顔を歪めてバスタオルを手に取る。

知りたくないなんて言ってる時点で,もう気付いてるんじゃないの?

私にそう囁くのは,天使か,悪魔か。
…ううん。どっちだとしても,それはきっと自分だ。