溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。

「ありがと」


言いながら,心の中では不満顔。

また子供扱い…

そうでないなら,それはそれでおかしい。

近い。

凪は簡単に私に触れすぎる。

もしかして,他でもそうなのだろうか。

そう思った途端,胸の辺りがチクリとした。

着心地の悪い服でも着ていたかと思い出してみても,そんなことはない。

何故だろう? 私はただ不思議に思う。

そして,私はその柔らかい感触から顔を背けた。

凪が引いていくのを気配で感じる。

だけど何か良くない気がして顔をあげた私は,急いで凪の手を掴んだ。

ガタッと椅子が大きく音をたてたけど,気にしない。



「凪っ! ティッシュ,あるから!」



私は慌てたために少しちぎれたティッシュを凪ぎに渡す。

凪は以外と大雑把だ。

私それを見て,忘れないでおこうと心に決めた。

だって,人の皮膚に触れたものを口にいれようとするなんて,ほんとどうかしている。

凪は今にも指から舐めとろうとしていた舌を引っ込め,素直に受け取った。

ほっと息を吐く。

心臓が,何故か昔見た太鼓のようにドコドコと大きな音をたてていた。