溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。

「僕は真理の婚約者だよ。そんな不倫みたいなことしない」



婚約者が何なの。
彼氏より規模が大きいだけの,彼氏よりずっと小さい名前だけのくせに。

何が悔しいのか,言いたいことはたくさんあって,それなのに何も出せない。

そのどれもが,どんな風に言ったって凪を傷つける気がして,言いたくない。

矛盾だらけだ。



「真理は僕といるの,嫌? 今日だけだ…」

「ご飯食べよう,凪。私,お腹すいた」



この話は,止めよう。
嫌とかじゃないの。

じゃあ,何が問題? 私は何が嫌?
自問自答の繰り返し。

私が背を向けると,凪が折れる。



「うん。そうだね」



私はまた,唇を噛んだ。

凪,また遠慮した。
私にだけ,また…
もう小さい子供ではないのに。

食パンにジャム,そんな簡単な食事をすると,あとはもういつも通り。

凪が家に来て,ただ2人してごろごろする。