溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。

私に友達は,いない。

つまり,数日出ていくような場所がない。



「凪,なんで鍵もって来なかったの」



私はジト目で凪を責める。



「朝突然頼まれたから」



自分は悪くないと?
凪の返答に私は頭を抱えた。



「友達の家は?」

「仲いいとはいえ突然行けないよ」



凪の答えに私は呆然とする。

人気者の凪が,青春で少し距離感おかしくなっててもおかしくない高校生男子が。
そんなに謙虚でいいの?

ここまで来ると,私もやっきになった。

結構珍しいけど確か…いたはず。



「一人暮らししてる女の人の先輩なら…」

「真理」



私はビクッと肩を揺らす。

言葉を止めたのが先か,凪が口を開いたのが先か…
言いたくなかったのか,止められたのか。

それだけが,すごく重要なことな気がした。

私はしゅんと小さくなる。

だって,分かるから。

凪,今,怒ってる。