溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。


どうして今凪が笑うんだろう。

何がおかしくて,凪は笑んでいるんだろう。

何もおかしな事はない。

凪は,確かに。

深く,ただ1人傷ついていた。

どうして?

より一層,駄目押しのように頭が白くなって。

一切の思考がショートする。



「僕さ,結構頑張って伝えてきたと思うんだけど……それでも真理は,僕が真理を好きだって言葉を,全部否定するんだね」



切なく届いたその声は,確かに私を責めていた。



「いいよ,真理がそう言うなら。僕は……ただの月島凪に戻る」



帰ろっかといつもの調子で言われて,少し遅れて私は歩き出した。

……

意味が,よく理解できなかった。

日本語を忘れたように,呼吸を忘れたように。

でも,ずっと真っ白な頭をかかえて。

最後にようやく,今の一言で私達の関係が終わったのだと気がつく。

それは全て失ったのと同義なんだって,そんな単純なことに私が気づいたのは,家の目の前に来てからだった。