凪が離れた手を取り直し,ぎゅっと私を抱きしめる。
こんないつ誰が通るかも分からない場所で,私は温もりに包まれた。
こんなことを,凪は平気で私にする人だ。
「大したことだよ,僕にとっては。こんなに可愛い真理は,僕だけ知っていれば良いとは思ってるけど。馬鹿にされていいなんて,1度だって思ったことない」
まだ続く気配を察して,私は凪の胸板をそっと押す。
思った通り,その身体はいとも簡単に引き離すことが出来た。
「でも,凪は別に私のことなんて好きじゃ無いでしょ?」
だったら何,と言われたら終わり。
だけどそれとはまた別の,正体不明な焦燥が私を取り巻く。
これ以上言ったら,後悔するぞと,耳の奥深く,さらに奥深い所で予感がした。
なに? なんで?
その姿が正体を現さないまま,私の舌はから回るようにまわる。



