溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。

ぎゅっと手が握られた。

何度も繋いだその凪の手は,大きくて,綺麗で,私とは全然違うもの。

どきどきと,今さら遅れて胸が鳴る。

そして,次の瞬間にはずんっと気分が落ち込んだ。

凪から香る,女性の香り。

長い間嗅ぐことのなかった,よく知る香りだ。

ずっと同じ香りを愛用していたのだろうか。

少し前の自分が,何度も気にしたあの香り。

そっか……

バイトの人だって,言ってたもんな……



「凪が,謝ることじゃないよ」



大分経ってから返した言葉を,凪は直ぐには理解できなかったようだった。

え? と顔を傾けられ,私は手をパッと離した。



「大したこと,言われたわけじゃないし」