溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。

「私ね,今まで,気付かれたくなくて。変わったなって思われたくなくて,すっごい努力してたよ」



誰に,はきっと俺。

何を,が,どんなに考えても分からない。

真香は俺に話しているのに,俺のことなんて見てもなくて。

独り言みたいに地面に落としながら,それでもそうじゃないよと片手で拳を握っていた。



「お化粧は睫毛をあげて,茶色に弄るだけ。服は動きやすいようにいつもジーパンで,上はTシャツ。靴も白のシンプルなスニーカー。アクセサリーは0」



真香が並べたのは,俺が見ていたままの真香。

全部全部作ってたんだよって,そんな苦笑いを真香は俺に渡して。

何でそんなに悲しそうなのか,俺は理解できないままでいる。



「女の子だって思われたら,終わりだと思ってた。全部全部気付かれて,千夏はいなくなるんだって」



真香はずっと女の子だ。

見た目も,中身も。

どこから見たって女の子なのに,真香は今にも泣きそうで。

口を挟むことなんて出来なかった。



「……あ」



気まずさにさ迷わせた視線。

その先に