それから。

数日が過ぎて。

校内の木々は太陽に向かって、元気に葉を茂らせて。

セミの大合唱の舞台と化している。



(暑くて溶ける……)



教室のすみっこ。

廊下側の列、いちばん後ろの席で。

透明の下敷きをうちわ代わりにパタパタ扇ぎながら。

私はもうすぐやってくる夏休みのことを考えていた。



いつもなら。

指折り数えて待つくらいに楽しみだった。

でも今年は。

夏休みの間、王子様に会えないと思うと複雑な気持ちになる。

学校に来れば、平日は毎日会えるのに。

長期間会えないなんて、やだなぁ。



「西原ー、またガム噛んでんの?」



教室の中央でクラスの男子が、西原くんに声をかけた。



「ん?まぁな。コレ、癖になるンだよ」



そう答えた西原くんは、明るい緑色の包み紙を持った手を、軽く上げた。

クラスでも目立つグループに属している女子が、
「えー、そんなに美味しいの?ちょーだい」
と、上目遣いでおねだりしている。

西原くんは、
「ダメー」
と、笑った。

女子はむくれている。