あんなに長く感じていた掃除時間は。
あっという間に終わってしまいそう。
「ゴミ捨てに行ったら終わりだな」
西原くんが用具入れに箒を片付けながら言う。
「私、行っておきます。手伝ってくれて本当に助かりました」
教室のゴミ箱を手にして、軽く頭を下げる。
「田畑さんはもう帰りな。ゴミ捨てはオレが行くから」
「でも」
「外が明るいうちに帰りなって。ほら、ゴミ箱渡して」
西原くんがゴミ箱にそっと手を伸ばした。
その時。
ほんの少しだったけれど。
西原くんの細長い指が、私の小さな手に触れた。
「じゃあな。また明日」
西原くんは教室を出て行く。
ドキンドキンとうるさい心臓を、制服の上から押さえた。
(好きになっちゃった……)
恋心を包むような心臓のビートを聴きながら。
廊下を歩いて行く王子様の背中を見つめていた。