私は早口で、
「そういうことなので、西原くんのガムを貰えて嬉しくて泣いてしまったんです。だから西原くんが私に何かしたとか、そういう涙ではなかったんです」
と、伝えた。
「……ちょっと何言っているのか、自分でも混乱していますが」
と付け加えると、
「あはっ!」
と、西原くんが笑った。
真っ赤な顔で。
嬉しそうに口角を上げて。
(キレイな笑顔)
王子様の笑顔が。
今、私だけに向けられている。
嬉しかった。
それだけで泣けてきた。
「え!?今度は何の涙!?」
西原くんは驚いた声を出してから、
「泣くなってー」
と、ニイッと笑った。
あの、私の大好きな表情だった。
(欲張りなのかな)
これで充分だって思えたならいいのに。
誤解も解けて。
気持ちも伝えられたし。
こんなにも優しい顔をしてもらえて。
それで充分だって思えたなら、いいのに。