バタバタと足音をさせて。

私は駅に続く道を走っている。

ミンミンと鳴くセミに応援されているみたい。

息を切らせて。

王子様を探している。



(お願い)



どうか追いつけますように。

西原くんを見つけられますように。



高校から最寄りの駅までは徒歩15分くらい。

途中にある坂道では息苦しさが増すけれど。

この先ずっと後悔の気持ちを抱えていく怖さを思うと。

私の両足は止まることはなく。

一歩、また一歩と進んでいく。



教室のすみっこから。

遠い存在の王子様のもとへ。

近づきたくて。



坂道を抜けて。

分かれ道を右に進む。

あとは一直線に駅を目指す。



(西原くんが見当たらない)



部活帰りのジャージ姿の高校生はちらほら見かけるけれど。

制服を着た。

短い黒髪の。

背が高い……。



……西原くんが、いない。



(もう駅に着いたのかな)