放課後の教室で、ふたりきり。

耳には窓の外のセミの声。

私はぐずぐず鼻をすすりながら、涙を指先で払う。



「大丈夫かよ」



西原くんが心配そうに私の顔をのぞきこむ。



「ほっぺた真っ赤じゃん」

「……だ、大丈夫です」

「どこがだよ」



しばらくの間。

涙の粒が次々とこぼれて。

私は泣き止めなかった。



その間ずっと。

西原くんはそばにいてくれた。

何も言わず、ただそばにいてくれたんだ。



「ごめんなさい、もう平気です」



やっと落ち着いて。

私は西原くんに軽く頭を下げた。



「ん」



西原くんは短く返事をくれて、自分の席まで移動した。

鞄を持って、また私のところへ戻ってくる。



「帰ろっか」

「え……、あ、はい」



私も机にかけていた鞄を持って立ち上がった。

勢いよく立ち上がったからか、手が滑って鞄を落としてしまう。