「ガムって、オレがいつも噛んでるやつ?」



西原くんはゴミ箱にちりとりの中身を入れた。



「……やっぱり、ダメですか?」

「?『やっぱり』って?」



西原くんが掃除用具入れを開けた。

箒とちりとりを片付けている。



「前にガムがほしいって言った人に、ダメって断っていたから」

「……あぁー、言ったっけ?うん、言ったな?ちょっと思い出してきた」



私が使っていた箒も片付けてくれている西原くんの顔が、だんだん赤くなってきている気がする。



「オレさー、あの時恥ずかしいこと言ってなかった?」

「え?」



『好きな人の好きなところ、自分だけが知っていたい的な?』



……ステキだと思ったけれど。

恥ずかしいの、かな?



考えている間に西原くんが、
「引くよなー」
と笑ったから、
「引きません」
と、私は首を振った。



「そんなふうに想ってもらえるなんて、いいなって……、うらやましいなって、思いました」