(見つかりませんように、見つかりませんように)



そんな私の願いは虚しく、
「あれ?田畑さんじゃん」
と、頭の上から西原くんの声。



顔を上げると、ニイッと笑う西原くんと目が合った。



「西原の友達?」



西原くんと一緒にいる男子が、西原くんに尋ねた。

友達?

友達では、ないよね?

でも西原くんに「違うけど」とか言われると、傷つく。

例えそれが本当のことでも。



「そうだよ、友達。同じクラスでさー、一緒に掃除した仲だし」



西原くんはそう言った。



その言葉がふわふわ宙に連れて行ってくれそうなくらい、私には嬉しかった。



「……で?なんでしゃがんでんの?」



ハッ!!



私は勢いよく立ち上がり、
「特に理由はない、です」
と、早口で返事をした。



もうひとりの男子が、
「西原、時間。早く買うもの買って、行かなくちゃ」
と、西原くんを小突く。