メイはシリルを睨みつける。

 本来ならば貴族であるシリルを睨みつけたり不機嫌さを出すなど、あってはならないことだ。

 しかし、メイにはどうして我慢ならなかった。

 この不穏な二人のやり取りに、いつの間にか他の騎士たちも興味深々で近づいてくる。


「ルチア様は、今年60になられます、伯爵様の後妻だそうです」

「なっ。なぜ、そんな」

「言っておりましたよね? ルチア様はどういう方が好きなのかと。もちろん、それは国王様も王太子様もご存じです。今、どこかに輿入れしたとしてもルチア様の悲しみは消えはしません。それならば、どこかの若い貴族に輿入れさせるのは酷というものでございます」

「しかし、だからといって後妻など」

「では、今の状態のルチア様に、好きでもない方に輿入れしろと?」

「いや、そうではないが。何もこんなに急ぐことなど」

「ルチア様を娘として接して下さる方の元へ預けて、穏やかな日を過ごしていただきたいというのが、皆の願いでございます」