「お兄様が結婚をなさるのなら、私もどこかに輿入れをしないといけませんね」


 そう遅くとも、父がこの城を去る時までには決めないといけない。

 新しい王と王妃が誕生すというのに、小姑である私がこの城に残るわけにはいかないから。

 先ほどの浮かれ気持ちに水を差された気分だ。

 いつかはと分かっていたのに、なぜ今日なのだろうと思ってしまう。

 でも例えこれが明日であったとしても、きっと私は同じことうを思うに違いない。

 そんな自分に嫌気がさす。


「でもお父様、これが悪い話というわけではないのでしょう。悪い話は何なのです?」

「いや、今日はもうやめておこう。せっかくのおいしい料理が台無しだ」


 確かにこれ以上は今は聞きたくない。私の心の内を読み取るように、父は話題を変えた。


「ルチアはどんな人が好きなんだい?」

「そうですね……。お父様のようにたくましくて、大きな手のお方が好きです」

「そうか」


 いつもなら喜ぶはずの父は、ただ複雑そうな顔をしていた。

 しかし私はそれ以上、尋ねることは出来なかった。

 静かに黙々と、美味しかったであろう料理を口に運んだ。