「今まで色々、本当にごめんね。しかも大事な日にまで時間取らせちゃって」
「いえいえ。私こそ、勝手に尾行してすみませんでした。それに、先輩とは直接お会いしたかったので、気にしないでください」
優しい声でそう述べた後、ニコッと目を細めた市瀬ちゃん。
実は今日、交際1ヶ月の日で、このあと一ノ瀬くんとデートしに行くらしい。
購買は土日祝日以外は開いてるから、本当は今日じゃなくても良かったんだけど……ちょっと、1人になるのが寂しくて。
2人に頼み込んで、10分だけ時間をもらったんだ。
「夏休み中も会ってるの?」
「はい。先輩が習い事で近所に来る日に、少しだけ会ってます」
「いいなぁ。羨ましい」
思わず率直な感想が漏れ出た。
市瀬ちゃんが言うには、家の近くに一ノ瀬くんが通っている剣道場があり、稽古終わりに毎週会っているんだそう。
長い長い夏休み、会ったのは登校日のみ。
お盆期間は1回電話しただけで、あとは家と学校(専門と短大)の往復続きの日々。バイト先も1回行ったきりで2回しか会えていない。



