葵君がリンクの中央近くに立つと、曲が流れ始めた。

 ショパン、『スケルツォ』第二番。

 俯いたポーズから音に合わせて肩をぴくりとさせ、葵君の演技が始まった。

 上半身が音に合わせてしなやかに動く。

 静と動の動き。

 スケーティングにもメリハリがついていた。

 最初のジャンプ。

 え!?  このサルコウは四回転!?

 高い! そして早くて軸の細い回転。

 でも軸が少し斜めになったからか、着氷が乱れてステッピングアウトした。

 葵君、大丈夫! 頑張って!!

 私は祈るように両手をギュッと握った。