君は、幸せな人魚姫になった

その笑顔を見た刹那、帆高の頭の中にテレビで見た夏空の下で輝くひまわりの花が浮かぶ。

ここにいる全員はみんな負け組、そう帆高は思っていた。だが、彼女笑顔を見ているとそう思えず、不思議な気持ちになる。

(いや、父さんたちの言葉の方が正しいだろ。父さんたちは出世して、お金がたくさんあって、幸せじゃないか)

帆高がそう思いながら少し動いた心を再び凍らそうとしていると、チャイムが鳴り、ホームルームをするために担任の先生が入ってくる。今年、教員免許を取ったばかりの女性の先生だ。

先生が挨拶をした後、委員会を明日決めるということと、部活の体験入部が始まるということを話し、ニコリと笑って帆高たちを見つめた。

「さて、皆さん一年生の交流会が来週にあります。何かやりたいことがあれば、ぜひ案をください。何もなければ、陶芸を作ってもらいます」

「は?」

陶芸を作るなど時間の無駄だ、と帆高は言いたくなる。交流会すら勉強ばかりの帆高にとっては、無駄で無意味なことなのだ。帆高が苛立ちながら窓の外を見ていると、クラスメートたちはわくわくした様子で案を言い始める。