帆高の運命が大きく変わったのは、高校に入学した頃だった。

高校という新しいスタートラインに立った時、多くの人は喜びと期待に満ち溢れているのだろう。だが帆高は、暗い表情で新しい教室へと入った。

(負け組の人生のスタートか……)

クラスメートになった人たちの騒がしい声は、耳から入っては通り抜けていく。帆高は机に伏せ、目をゆっくりと閉じた。その心は、空っぽになってしまったように思えた。全てがどうでもよく、ただ何もしたくない。

帆高の家は、両親が二人とも有名な高校と大学を卒業し、一流の企業に就職している。そんな両親は、帆高や兄弟たちに毎日のように言っていた。

「有名な高校・大学に進学して、一流の企業に就職できないと人生は負けたようなものだ」

「とにかく勉強して、いい会社に入ってちょうだい。それがあなたたちの幸せなんだから」

幼い頃から遊ぶことより勉強をさせられてきた帆高は、それが幸せなのだと信じて疑わなかった。だが、帆高は親の望む人生を歩めなかった。