君は、幸せな人魚姫になった

「……帆高、くん?」

みずきがゆっくりと目を開ける。そして、華奢な指で帆高の頬をそっと触れた。

「泣いてくれてたの?」

「当たり前だろ!」

帆高はその手を取り、目を覚ましてくれたことにホッとする。安心すると、涙はまた流れ始めてしまった。だが、みずきには伝えなくてはならないことがある。

「みずき、残酷な話だけど聞いてくれ……」

医者に言われたことを、帆高はみずきにそのまま伝えた。残酷だとしても知りたい、それをみずきが願ったからだ。

「そっか……」

みずきはそう呟いた後、窓の外に目を向ける。外は日がゆっくりと登り始め、病室の窓からは煌めく水平線が見えた。

「すごく綺麗……」

光り輝く海面を見て、みずきが呟く。こんな時に何を言っているんだと帆高は思ったものの、みずきは夏の海から目を離さない。

帆高も海の方に目を向ける。太陽に照らされた海は確かに綺麗だ。この光り輝く海を見て、多くの人は希望を感じるのだろう。「綺麗」だと言うのだろう。だが、帆高にとっては絶望しか感じず、目の前がぼやけてしまう。