映画のほとんどのストーリーを流し見終わって、私達は深春の部屋へ行った。
深春の部屋は二階の角。階段を上がってすぐにある部屋が深春のお父さんとお母さんの部屋。
深春の部屋の向かいにももう一部屋あるけれど、そこは空室らしい。
深春の部屋は、玄関よりももっと、深春の香りがした。
芳香剤も観葉植物とかも見当たらないけれど、ずっと使っている人の匂いになってくるのかもしれない。
リビングに居た時よりも落ち着くと思った。
深春に包まれているみたいな安心感がある。
深春はベッドの上に座って、ポニーテールのゴムを外して、ジャージの上を脱いだ。
下には薄いピンク色のTシャツを着ている。
左胸のところに有名なスポーツブランドのロゴがプリントされてある。
「深春って中学の時部活してたの?」
「ううん。してないよ。」
「あれ。帰宅部なのにそういうTシャツ持ってるんだ?」
「たまにジョギングしてるの。運動不足だし、体型も気になるし。」
深春は言いながら二の腕をさすった。
白くてほっそりしたその腕に、余分な肉も脂肪も感じられない。
「まふゆもジャージ脱ぎなよ。」
深春に言われて私もジャージの上を脱いで、畳んで床に置いた。
私が着ているTシャツには、中学の名前の後ろに付けられた“祭”の文字。
「何、そのTシャツ。」
「中学の文化祭のクラスTシャツ…。もー!笑わないでよ!」
「だって!ごめん。それ着てくるんだ。」
ごめんって言いながらも深春は笑い続けて、滲んだ涙を拭っている。
深春が楽しいならそれでいいけれど、私も深春みたいなかっこいいスポーツ用のTシャツを買おうかなって思った。
もちろん、私も部活なんてしていない。
授業だってまともに受けていなかったのに。
でも、深春と一緒に運動をするって理由で買うのもいいかもしれない。
共通の話題も一緒に居る時間も増えるし。
それを続けられる根気が私にあるとは思えないけれど…。
深春はほどいた髪の毛を左肩のほうへ流してまとめた。
髪の毛をおろすとグッと大人っぽくなる。
そのままベッドに寝転んだ深春が、空いているスペースをぽんぽんして私を呼んだ。
「早く。まふゆもおいで。」
「うん。」
深春に呼ばれて、ベッドのフチに座った。
深春とは反対側を向いて座っているけれど、背中に視線を感じた。
ベッドについた腕をグイッと引っ張られて、私の体はバランスを崩して後ろに倒れた。
「一緒に寝るの。」
深春がブランケットを私の体に掛けた。
保健室のエタノールみたいな匂いとは違う。
あの日、元カレの部屋で私に掛けてくれたブランケットだ。
「懐かしい。これ。」
「覚えてた?」
「うん。深春の匂い。」
「臭かったらヤだから言わないで。」
「好きだから言ってるの。」
「もう…。それに懐かしむほどそんなに時間経ってないよ。」
深春は照れているのか本当に拗ねているのか分からないけれど、ぷいと反対側に寝返りした。
確かに二ヶ月くらいしか経っていないけれど、あれから色んなことがあった。
あの時は深春に本当の気持ちが言えなかったし、気付いた自分の感情に戸惑った。
今は違う。好きな人が隣に居て、自分と同じ“好き”をくれる。
これ以上は何も要らないと思っていた物が、今は私の人生の中にある。
誰に何を言われても、私は今が一番幸せだ。
「深春、こっち向いてよ。」
んー…と小さく声を漏らしたけれど、深春は動かない。
深春に覆いかぶさるようにして、深春の顔を覗き込んだ。
深春の部屋は二階の角。階段を上がってすぐにある部屋が深春のお父さんとお母さんの部屋。
深春の部屋の向かいにももう一部屋あるけれど、そこは空室らしい。
深春の部屋は、玄関よりももっと、深春の香りがした。
芳香剤も観葉植物とかも見当たらないけれど、ずっと使っている人の匂いになってくるのかもしれない。
リビングに居た時よりも落ち着くと思った。
深春に包まれているみたいな安心感がある。
深春はベッドの上に座って、ポニーテールのゴムを外して、ジャージの上を脱いだ。
下には薄いピンク色のTシャツを着ている。
左胸のところに有名なスポーツブランドのロゴがプリントされてある。
「深春って中学の時部活してたの?」
「ううん。してないよ。」
「あれ。帰宅部なのにそういうTシャツ持ってるんだ?」
「たまにジョギングしてるの。運動不足だし、体型も気になるし。」
深春は言いながら二の腕をさすった。
白くてほっそりしたその腕に、余分な肉も脂肪も感じられない。
「まふゆもジャージ脱ぎなよ。」
深春に言われて私もジャージの上を脱いで、畳んで床に置いた。
私が着ているTシャツには、中学の名前の後ろに付けられた“祭”の文字。
「何、そのTシャツ。」
「中学の文化祭のクラスTシャツ…。もー!笑わないでよ!」
「だって!ごめん。それ着てくるんだ。」
ごめんって言いながらも深春は笑い続けて、滲んだ涙を拭っている。
深春が楽しいならそれでいいけれど、私も深春みたいなかっこいいスポーツ用のTシャツを買おうかなって思った。
もちろん、私も部活なんてしていない。
授業だってまともに受けていなかったのに。
でも、深春と一緒に運動をするって理由で買うのもいいかもしれない。
共通の話題も一緒に居る時間も増えるし。
それを続けられる根気が私にあるとは思えないけれど…。
深春はほどいた髪の毛を左肩のほうへ流してまとめた。
髪の毛をおろすとグッと大人っぽくなる。
そのままベッドに寝転んだ深春が、空いているスペースをぽんぽんして私を呼んだ。
「早く。まふゆもおいで。」
「うん。」
深春に呼ばれて、ベッドのフチに座った。
深春とは反対側を向いて座っているけれど、背中に視線を感じた。
ベッドについた腕をグイッと引っ張られて、私の体はバランスを崩して後ろに倒れた。
「一緒に寝るの。」
深春がブランケットを私の体に掛けた。
保健室のエタノールみたいな匂いとは違う。
あの日、元カレの部屋で私に掛けてくれたブランケットだ。
「懐かしい。これ。」
「覚えてた?」
「うん。深春の匂い。」
「臭かったらヤだから言わないで。」
「好きだから言ってるの。」
「もう…。それに懐かしむほどそんなに時間経ってないよ。」
深春は照れているのか本当に拗ねているのか分からないけれど、ぷいと反対側に寝返りした。
確かに二ヶ月くらいしか経っていないけれど、あれから色んなことがあった。
あの時は深春に本当の気持ちが言えなかったし、気付いた自分の感情に戸惑った。
今は違う。好きな人が隣に居て、自分と同じ“好き”をくれる。
これ以上は何も要らないと思っていた物が、今は私の人生の中にある。
誰に何を言われても、私は今が一番幸せだ。
「深春、こっち向いてよ。」
んー…と小さく声を漏らしたけれど、深春は動かない。
深春に覆いかぶさるようにして、深春の顔を覗き込んだ。



