やわく、制服で隠して。

「まふゆに二度と関わらないって約束できる?」

カホは深春と目を合わせないようにか、ずっと俯いたまま、何も言わない。
そんなカホに詰め寄って、まふゆがもう一度言った。

「約束しろって言ってんの。お父さんのお仕事も職場もぜーんぶ分かってるよ。動画だってしっかり残ってる。あなた達もよ。」

「まふゆには悪いけど、まふゆ一人の為にそんなリスク負いたくないから。絶対関わんないよ。」

女子の一人が言って、もう一人がコクコクと頷いた。
捨て台詞のように、カホが「まふゆにそんな価値無いから。」って言った。

「萎えたし早くいこーぜ。」

トンガリ靴が言って、ザリザリとアスファルトの音を立てながら歩きだした。
摺り足はただのクセだろうか。それともあの男も虚勢の為に、ああいう格好をしているのか。

茶髪が「残念。君とはもう少し遊んでみたかったな。」と深春に言って、周りよりは何故か機嫌良さそうに立ち去った。

「まふゆ。」

「アミ。」

「絶交だから。」

「うん。バイバイ。」

アミは、もしかしたらこの期に及んで私が許しを乞うと思ったのかもしれない。
私を見下ろしながら絶交と言ったアミの目に宿る感情は読み取れない。

何の未練も無い。これから先アミやあの子達がどうなろうが、カホがこれからどういう生き方をしていこうが、私には一切関係の無いことだと思えた。

「まふゆの為にリスクは負えない」
「まふゆの代わりなんていくらでもいる。」

そう言ったあの子達の言葉は確かで、その感情がこの三年間の全てだ。

「行こ。」

アミの背中を見送ってから、深春が言った。

「うん。」

立ち上がってスカートの汚れを払う。
足が痛い。所々擦りむいていたり、痣になっている部分もある。

「帰る前にちょっといい?」

「うん?」

深春が歩き出した。少し歩いて、深春は立ち止まって私が隣に並ぶのを待った。
隣に立ったら手を繋いで、寄り添って歩いてくれた。