やわく、制服で隠して。

「もういーかい。まーだだよ。」

「は?何言ってんの?いきなり割り込んできて、さっきから何言ってんの?スゲェムカつくんだけど?」

「もういーかい。まーだだよ。」

「おい、いい加減にしろよ。」

繰り返す深春に、カホが掴みかかろうとした。だけど、深春のほうが早かった。
カホの前髪を掴んだ深春は、くっつきそうなくらい顔を近付けて、声を低くして言った。

「誰が終わっていいって言った?あなたこそいい加減気付いてね?この場を仕切ってんのは、もうあなたではありませーん。」

「ちょッ…!離せッ…!!!」

頭を振ってもがくカホを、深春は強めに振り払った。
よろけながら体勢を持ち直したカホが、懲りもせずに深春に掴みかかろうとして、それを女子二人が抑え込んで止めた。

「カホ…!マジでやめたほうがいいって!」

ジタバタと暴れるカホに見切りをつけて、深春が私と男達のほうへ近付いた。

「まふゆ、大丈夫?」

しゃがんだままの私を、あの日のように深春は抱き締めてくれた。
涙は出なかった。ただ安心して、そのままずっと深春の体温を感じていたかった。

だけど深春は私から体を離して、立ち上がって男達に言った。

「お兄さん達、大人だよね?こういうのって悪いことなんじゃなかったっけ?児童ナントカ…ってやつ?」

「そんなこと気にしなくていいんだよ。いやー、みはるちゃん、だっけ?君、凄いね。俺達ともっとさ…。」

「話、聞いてます?」

愉快そうに喋っていたくちピの表情が、ピタッと固まった。そのままゆっくりと無表情に変わっていく。
スローモーションの映像を観ているみたいだった。