やわく、制服で隠して。

肩を掴んでいたくちピが手を離して、腕を掴んで思い切り前に引いてきた。

男の力には敵わない。引かれた腕をそのまま離されて、私は前のめりに転んだ。
咄嗟に腕が下になるように、右に重心を置いて倒れたから顔面は守られたけれど、アスファルトにぶつけた右腕がジンジンと痛んだ。

片膝をつくようにして起き上がったけれど、トンガリ靴に頭を押さえつけられた。

「土下座。」

「は?」

「土下座して謝ってよ。カホと、俺らに生意気な態度取ったこと。」

「絶対ヤダ。」

「拒否権無いから。」

「あはは…!ねぇ、さっきからアンタら何様なの?アンタ達に従う理由なんて一個も無いんだけど!?マジで誰?って感じ!」

「あんま調子乗ってんじゃねーぞ。」

口ピが私の顎を持って、上を向かせてくる。
ギラギラと獲物を狙うような目に、嫌悪感が込み上げてくる。

「一言謝れば見逃してやろうと思ってたのになぁ。あー、まふゆちゃん、写真とちょっと雰囲気変わっちゃってるけど、顔は可愛いじゃん。じゃあもういいや。カホ、やっぱこいつ、ヤッちゃっていい?」

「えー、でもまふゆはカホの親友だからなぁー。」

「もう友達辞めるんだろ?」

トンガリ靴が髪の毛を引っ張って、完全に上を向く形になった。

「あれぇ。まふゆちゃん、これ、何?」

ツ…と、くちピが喉元を撫でた。
頭が真っ白になる。キュッと締まる、あの感覚。
呼吸が荒くなる。苦しい。助けて。

さっきよりもずっと、くちピの声色が楽しそうに路地に響いた。

「へぇー。まふゆちゃん、こういうプレイが好きなんだ?じゃあ俺、もっとイイことしてあげる。」

「ねぇ、ヤバいよ。」

後ろのほうでアミの声が聞こえる。
カホが「早く謝んなよー。」ってつまらなそうに囃し立てた。

カホのその声に応えるように、ピコン、と小さな電子音が鳴った。
その音が私の耳に届いたことが不思議なくらい、小さな音だったけれど、直接脳内に響いたかのようなその確かな音を、私は聞き逃さなかった。