やわく、制服で隠して。

アミが出ていって、余計にシン、とした生活指導室。
握っていたシャーペンを机の上に転がした。

「許可なく授業を欠席しました。反省しています。二度とこのようなことは繰り返しません。申し訳ございませんでした。」

テンプレートのような短文を書き殴った作文用紙。四百字詰めの作文用紙の上に、たったこれだけの文字数を見たら、先生はもっと怒るかもしれない。

アミがこの学校を受験した本当の理由も、呪縛のようにカホから逃れられないアミのことも、悲しいような気がした。

だけどカホから離れないのはアミの意志で、それはもう、洗脳に近い。
悲しいけれど、私のせいにしてアミを縛り付けるカホのことを選び続けるのも、彼女の人生だ。

私にはもうどうすることも出来なくて、自分の行いを後悔することは出来ても、アミのこれからの時間までは、一緒に背負ってあげることは出来ない。

「もう終わるわよ。書けた?」

先生が生活指導室に入ってきた。片手にアミが書いた反省文を持っている。

「はい。すみませんでした。」

私の反省文を読んだ先生は溜め息をついたけれど、「二度目は無しね。」と言って、教室から出してくれた。

二時間目の終了を告げるチャイムが鳴った。
周りの教室からガタガタと、椅子が床を鳴らす音が聞こえてきて、急に騒がしくなった。

スカートのポケットの中でスマホが震えた。
一件のメッセージ。カホからだ。

「放課後、そっち行くから。」

すごく、すごくすごくすごく、嫌だと思った。
だけど、私が望んだことじゃないにしろ、アミの人生を変えてしまった悲しさも感じていた。

「分かった。」

私のメッセージにすぐに既読のマークが付いた。
返事は無かったから、そのままスマホをポケットに突っ込んだ。

その日一日中、私は上の空で、深春も深くは聞いてこなかった。
私も深春と先輩のことはすっかり忘れていて、ふわふわと地に足がついていないような一日を過ごしていた。