やわく、制服で隠して。

「それは違うよ。強くなんてしてない。」

「してくれた!カホに出会えてなかったら、私はずっと地味で馬鹿にされて、イジられ続けてた!でもそういう学校生活をカホが変えてくれたの。カホは私のこと認めてくれたし、私だって昔の自分より、今の自分のほうが好きだもん!」

「アミが逆らわないからでしょ。」

「…。」

「自分になりたいって、自分のことばっかり真似をする子。友達だよって一言で、なんでも言うこと聞いてくれて、望むことは何でもやってくれる。まるで都合のいい操り人形だよ。」

バシッと渇いた音が、トイレに響いた。
アミに叩かれた頬を触った。少しだけ熱い。だけど痛くはない。何も感じなかった。

「いい加減にしてよ。偉そうに説教垂れて、何様なの?自分だってカホにどれだけ…」

「だからそれを辞めるって言ってるの。自分の地位を守る為にカホとツルんでたことも認める。ヤンキーみたいなことしてイキがって、自分は周りとは違うんだって勘違いしてた。でも、私だってカホの操り人形だったんだよ。そういうの、もう辞めるよ。アミがカホへの恩を感じてて、今のままカホを切れないって言うのならそうすればいい。カホに言われた通りこの学校に来たのも、今でもカホの言葉に従って選んでるのもアミなんだから。」

「私はアンタみたいな裏切り者にはならない。」

「そう。」

アミから一歩離れて、背を向けようとした時、背後から「何やってるの!」と声が聞こえた。

振り向いたら、二年生の生活指導の先生が立っていた。
各学年に一人ずつ生活指導の先生が居て、毎時間、順番に見回りをしていることは知っていた。

私とアミは、一緒に生活指導の空き教室に連れていかれて、二時間目が終わるまでの残りの時間、一緒に反省文を書かされることになった。

先に書き終わったアミは、反省文を書いた作文用紙を持って、教室を出た。
ドアの外に出る前に私の方を振り返って、「髪の毛、クソダサ。」と言って、乱暴にドアを閉めた。