やわく、制服で隠して。

「カホに、まふゆを見張れって言われたんだよ。」

「見張る?」

「グループのメンバーが絶対に選ばないような進学校に行くって言い出して、絶対におかしいって。まふゆはグループを抜けるつもりだってカホは気付いてた。だからそうさせないように私にまふゆと同じ高校に行けって。」

「そんなことの為に無理して勉強してここに来たの…?なんでそんなことばっかり…。なんでアミの人生を変えるようなことにまで従うんだよ!アンタは本当にカホの奴隷にでもなったつもり!?おかしいよ!」

「私だって辛かった!カホと同じ制服を着て、一緒の高校に通いたかった!私はグループを抜けたいなんて思ってないのに、なんで私が…!」

アミが下を向いた。泣いているのが分かる。スカートの裾を握り締める手が震えていた。

「じゃあそう言えば良かったじゃん…。」

「言えないよ。カホに逆らったら私…。」

「何でそこまでして私をグループに居させるの。」

「カホは自分を選ばない人間が許せないんだよ。多分まふゆじゃなくても、自分から離れるって言うなら誰だって許さない。」

「そんなことの為に遣われて、アミは悔しくないの?」

「悔しいに決まってんじゃん!私はカホと一緒に居たいのに、なんで裏切り者の為に私が離れなきゃいけないの!?アンタのせいでこうなってんだから責任取ってよ!」

アミが私の肩を掴んでグッと力を入れた。
その手を払い除けて、私が逆にアミの肩を押さえつけて、壁際に追いやった。

「アミ、やめて。」

アミは少しだけ私より身長が低い。更に抑えつけられて、いつもより目線が下になっている。
くちびるを噛んで上目遣いに私を睨みつけるアミの目を、私はしっかりと見ていた。

「こんなこと辞めようよ。私のせいでアミの人生が変わってしまったことは悲しいって思うよ。でも私はそんなこと望んで無かったし、アミだって嫌だって言えたんだよ。私とアミがこんな風に歪み合ったって意味無いよ…。」

「うるさい!アンタが逆らったりしなければ、こんなことにはならなかった!」

「なってたよ。」

「…は。」

アミの目には涙が溜まっている。歯を食いしばっているのか、左の口角だけが上がっていて、苦しそうな表情だった。

「私のせいじゃなくても、アミがずっとカホの傍に居続けるなら、アミはこれからもずっと、カホに人生を変えられていくんだよ。でもそれはアミのせいでもある。アミがそれを選んでるんだから。」

「偉そうに言わないでよ。」

「何でそんなに苦しそうな顔をするのに、カホに従い続けるの。」

「カホが…私を強くしてくれたから。」

あんなに大声で虚勢を張っていたのに、アミの声は別人みたいに小さくなって、頬に涙が流れた。
その涙を、アミは拭おうとはしなかった。