やわく、制服で隠して。

「私さ、中学の頃はあのグループで、ああいう生活をすることが当たり前だって思ってた。学校はダルいけどカホのグループに居れば自分のことが認められた気分になれたし、周りからもナメられない。でもそれは私が凄いんじゃないし、カホだって本当は…凄くなんかないよ。」

「なんで…。」

「確かにみんなカホに一目置いてた。でもそれってカホを取り巻く大人とか環境がそうさせてた部分もあるし、憧れもあったと思うけど、少なからず恐怖もあったんじゃないかな。カホに逆らったら痛い目に遭うって…。私もカホの傍に居ることでずっとカホの威を借りてたんだよ。情けないよね。私にはなんにも無いのに…。大人ぶって、ちょっと危険なことに手を出して優越感に浸ってた。でもそういうこと、もう辞める。虚勢張ったって、本当はずっとしんどかったんだよ。」

「裏切るの?」

「カホみたいなこと言うんだね。」

ゆっくりと言った私の言葉に、アミは眉間の皺を深くした。

「アミ、本当は疲れてるんじゃないの?アミも変わりたくてこの高校を受けたんじゃないの。」

「は?何言ってんの?」

怒りか悲しみか分からず、震えていたアミの声は、もう震えていない。
私を睨みつけながらきっぱりと言ったアミの感情が、怒りだってはっきりと分かった。

「変わりたいって何?誰のせいでこんなとこに居ると思ってんの?」

「…どういうこと?」

「さっきから勝手なことばっかり!綺麗事ばっかり並べてさぁ!誰のせいでこんな所に来たと思ってんだよ!私だって本当はカホと同じ制服が着たかったのに!」

二時間目が始まる前の予鈴が鳴った。
アミの手を引いて、その場を離れた。
私に引きずられるようにしてついてくるアミは、ずっと怒っていたけれど、とにかくアミの手を引いて、廊下の一番端の女子トイレに駆け込んだ。

「あんまり大声出さないでね。先生来ちゃうから。」

「ちょっとどういうつもり?」

「話、途中で終われないから。今更じゃん。授業なんて散々サボッてきたのに。ビビッてんの?」

「はぁ!?」

「冗談。それで?さっきの、どういうこと?」

アミが苛立ちながら頭を掻いて、わざとらしく息を吐いた。
小さく聞こえた舌打ちを、私は聞こえないふりをした。