やわく、制服で隠して。

「カホ、これが最後のチャンスだって言ってたよ。」

私を睨みつけたまま、アミが声を絞り出した。

「チャンス?」

「これでまた来なかったら、まふゆのことはもう切るって。」

「そっか。じゃあそうして貰えると助かるかな。私ももう、グループ抜けるつもりだったし。」

「は?ちょっと何言ってんの!」

アミの大声を出す癖は虚勢だ。
カホの前ではアミはそんな態度は取れない。そして誰よりもカホの傍に居ることにステータスを感じているのはアミだ。

自分は強い人間だって、周りとは違うんだって誇示したい感情の表れだった。

アミは小学生の頃、同級生から仲間外れにされたり、地味だってイジられたりしていた。
小学校が違う私にはそれがどの程度だったかは知らないけれど、辛かった気持ちが分からないわけでは無い。

中学生になって自分を変えたくて、同じクラスになったカホの真似をするようになった。
まるで雑誌の中のファッションモデルに倣うように。

それに対してカホは嫌がるどころか、むしろ喜んだ。
自分になりたい他人が居る。それは自分自身の存在が認められたということだ。

カホに気に入られたアミはすぐにグループの一員になって、カホの機嫌を損ねないように誰よりも気を遣っていたし、小学校からの同級生の前ではあからさまに虚勢を張るようになった。

「アミ、無理してない?」

「無理…?だから何言ってんの。」

「もうここにはさ、カホは居ないんだよ。高校が離れて分かったじゃん。カホが居ることは一生じゃないって。無理して機嫌取ったりカホの言いなりになること無いんだよ。自分に合った生活しようよ。誰かの奴隷みたいな暮らしは悲しいよ。まだ高校生なのに、大人になるまで…大人になってもずっとそうやって生きていくの?」

「まふゆ。おかしいよ。高校生になってからずっと。」

アミの声は震えていた。
それが怒りなのか悲しさなのか、私には分からない。