やわく、制服で隠して。

ドスッ。

鈍い音がして、壁に私を追いやりながらキリキリと首を絞めていた彼が、サイドに派手に転がった。

スローモーションのように深春が横から思い切り体当たりしたのが、うっすらと見えた。

ベッドの上だから彼はきっと、そんなには痛くない。
彼と一緒にベッドに転がった深春は横たわったままの彼に馬乗りになって、大声で喚いている。

急に酸素が送り込まれた脳がチカチカしている。
ヒッヒッと僅かにしか息が吸えない。
深春が何かを叫んでいることはわかる。だけど何も聞き取れない。口をパクパクしても、聴覚を失ったみたいに自分の声も聞こえないし、天井が揺れている。

彼に馬乗りになって叫んでいる深春、
天井を見上げたまま転がっている私の足の方向から、また数人の人が走り込んできた。
揺れる視界の中で、数人の大人に囲まれているってことだけが分かった。

徐々に呼吸が、乱れながらも出来るようになって、周りの音が聞こえるようになった時、涙が溢れ出した。

「死ね!ここで死ね!」

涙で霞む視界の先で、馬乗りになったままの深春が、彼にカッターナイフを突き付けている。

まふゆに躾をしていただけだ、冗談に決まってる、殺すわけないだろとか口々に声を張り上げている彼。

二人の大人が深春を押さえ付けて、三人の大人が彼を羽交締めにした。

「離して!殺す!絶対に許さない!許さない!殺してやる!!!」

深春は叫び続けた。叫び続ける深春を、大人達がもう大丈夫だからと抱き締めて背中をさすっている。

「みは…る…。」

掠れた声で深春の名前を呼んだ。喉がすごく痛い。血が出ているんじゃないかとすら思った。

「みはる…。」

深春の叫び声がピタッと止まった。

「まふ…まふゆッ…!」

深春を落ち着かせようと背中をさすったり、なだめている人達を払い退けて、深春が私にガバッと覆い被さってきた。

ベットに転がったままの私はそのまま深春に抱き締められて、涙が流れ続けた。

「やっぱり一緒に来てれば良かった。ごめんね、ごめん…まふゆ…。」

一緒に涙を流す深春に、首を横に振ることでしか応えられない。
傍では彼がまだ叫び続けている。

もう絶対にしない、まふゆにも近付かない、騒ぎにしないでくれ、俺が悪かったと、大人達に押さえつけられながら懇願する彼に、深春が「絶対に許さない。」と嗚咽を漏らしながら言い放った。