やわく、制服で隠して。

「まふゆから誘ってくるなんて珍しいから驚いた。」

にこにこと機嫌良さそうに笑いながら、どうぞとスリッパを出された。

「ううん。ここでいいよ。すぐ終わるから。」

彼が中腰のまま、上目遣いで私を見上げる。
私を見ながらゆっくりと瞬きをしたその行為が、わざとかは分からないけれど、背筋がゾッとした。

「今日は遊びに来たんじゃないんだ。あのさ、私達…」

「まぁいいから上がりなよ。まふゆの好きそうな紅茶があるんだ。それに喜びそうな服も新しく…!」

彼が早口でまくし立てた。既に立ち上がっていて、私の腕に触れてくる。
その手を振り払った。払われた手を、彼は数秒見つめて、顔いっぱいに笑みを貼り付けている。

「ううん。今日は…、もうあなたとは会わない。ここにも来ない。」

「うるさいなぁ。」

「は…?」

「まふゆがどうしたいとかじゃないから。」

「何それ。」

「俺の彼女になった時点でまふゆは俺の物なの。何度も言わせるなよ。いいからこっちに来いって。」

さっきよりも強く握られた腕に爪が食い込んで痛い。逆らえない力で引っ張ってくる。さっきみたいに振り払うこともできない。

「やだッ…やめて!」

グイグイと引きずられたまま寝室に押し込まれて、腕を振りかぶるようにしてベッドに投げされた。

マットレスのスプリングをいつもより強く当たって痛かった。

「ねぇ、怖いよ…やめてよ…。」

「当たり前だろ。お仕置きなんだから。」

「お仕置き?」

「悪い子にはお仕置きしなきゃ。それが怖いのは当たり前。怖くなきゃお仕置きの意味ねぇから。まふゆは本当におバカちゃんだねぇ。」

口角だけを上げてニヤニヤと私に覆いかぶさるように近寄ってくる彼は、目が全然笑っていない。

「やだぁ…!!!もうやめてよ、こんなこと終わりにして!アンタおかしいよ!」

「おかしいのはまふゆだろ。」

「アンタだから!自分が何やってるか分かってんの!?」

「自分から来たくせに。そもそも家庭教師に俺を選んだのもお前んとこだし、俺の物になるって決めたのもお前だろ。被害者ヅラするなよ。」

彼の目の焦点が定まっていない。
私を見ているようで、その瞳にはきっと私は映っていない。

「アンタ大人でしょ!?そもそも成人と未成年が付き合うのって悪いことなんだから!」

「まふゆ。」

暴走していた動きがピタッと止まって、スッと私の髪の毛を撫でた。

「誰に入れ知恵されたの?」

「何がよ…。」

「そんな法律がどうこうなんてまふゆは考えなくていいんだよ?今まで通り俺の言うことだけを聞いて、俺のお人形でいればいい。」

「人形…?私のこと好きなんじゃなかったの…。」

「ははっ。まふゆがそんなっ…女の子女の子したこと言ってくるなんて驚いた。お前だって分かってんだろ、JKブランド!!自分の価値が何か分かってて俺に手出したんじゃねぇのかよ。」