二月十五日。
深春の誕生日がやってきた。
私の誕生日は祝うことが出来ないから、私の分も一緒にお祝いしようって深春が言ってくれて、学校が終わった後に近くのケーキ屋さんで小さいホールケーキを買った。

学校の近くの公園で、ベンチに座って深春が膝の上にケーキの箱を乗せた。

箱を開けて、少しずつケーキを箱から引き出していく。
そのケーキをそっと、私と深春の間に置いた。
ベンチに置くことになったけれど、ケーキの下には台紙が敷いてあるし問題は無い。

ケーキと一緒に買ったろうそくを真ん中に突き立てる。
“1”と“6”の数字を象ったろうそく。
私達はライターとか、火をつける道具は持っていないから、ろうそくに火を灯すことは出来ないけれど、二人でハッピーバースデーの歌を歌って、ふぅーっと火を消す真似をした。

「深春、十六歳おめでとう。」

「ありがとう。」

二人だけの誕生日パーティーは、まるで結婚式みたいでドキドキした。
深春がケーキ屋さんで貰ったプラスチックのフォークの先で生クリームをすくって、私の口元に持ってくる。

ペロッと舐めたクリームは甘かった。

苺、オレンジ、キウイとフルーツを順番に私の口に運ぶ。
餌付けをしている鳥のお母さんみたいだ。

「美味しい?」

「甘い。」

「フルーツいっぱいで食べやすいでしょ。」

「深春も食べて。」

「生クリームは苦手。」

私も、って言って、二人で吹き出した。
なんで生クリームのケーキを買ったんだっけ。
フルールがいっぱい乗ってて豪華に見えたからだっけ。

二人だったら余裕で食べ切れるくらいのホールケーキを、甘い甘いって言いながら時間をかけて、最後の一口を飲み込んだ。