やわく、制服で隠して。

「私、本当は全部話してって言って欲しかったの。」

「私に?」

「うん。深春に全部知ってて欲しかった。知らないことがあるなんて嫌だって言われてもいい。だって…私が…、私が深春のこと…。」

「知りたい?私のこと、全部。」

「うん。」

「分かった。じゃあまふゆも、これからはまふゆのこと全部教えてくれなきゃ駄目だよ。」

「うん。全部話すよ。」

深春が約束、って声をひそめて言った。
それは秘密を交わし合う時みたいな、深春の“特別”を意識してしまうような声だった。

「彼氏はね、年上なの。中学卒業するちょっと前から付き合ってる。」

「高校生?」

「ううん。大学生。」

「それって…。」

深春が何を思ったか、私には分かった。深春が思ったことが“正しいこと“だから。

「二十一歳。今年で二十二歳になる。私の、家庭教師をしてくれてた人だよ。」

「大人じゃん。」

「大人だね。」

「まふゆ、二十一歳と十六歳は…」

「車持ち、サイコーだよ。」

二十一歳と十六歳は付き合っちゃ駄目。深春が思ったこと、言おうとしたことが手に取るように分かるから、私は深春の言葉を遮った。

駄目なことは分かっている。私も、多分彼氏も。

「他に、付き合ってる理由は?」

「大人だし…、やっぱり同年代より落ち着いてるっていうか、年上と付き合ってるなんてちょっと格好いいかなって。家庭教師できるくらいだから頭もいいし…、顔も結構いいんだよ。」

「それだけ?」

それだけ…。深春が“それだけ”と言った彼氏は、私にとっては十分高いスペックだった。
自分より全然、色んなことを知っていて、色んな物を持っている人が私のことを好きになる。
私を彼女にしたいって思っている。
それは、私が認められたっていうことだ。
私は…そう思っていた。