やわく、制服で隠して。

そうして冬子ちゃんはほんの少しの期間でまたこの町に戻った。
ご主人とスピード結婚して入籍。
四月、女の子を出産したって噂が舞い込んで、その年の六月、私のお腹の中にも命が宿っていることが分かったの。二ヶ月だった。

冬子ちゃんが出産をした四月には妊娠していたことになる。
四月の始めに産まれたって聞いたから、この子はきっと同級生になるんじゃないかしらって思ったわ。

神様からの最高のプレゼント。
こんな奇跡って他には無いわ。

深春が小学生になるのを機に、私達もこの町に戻ってきた。
でも入念に計画を立てて、冬子ちゃんの娘とは絶対に学区が変わる場所を細かく調べたの。

面白いほどに計画通りに、何年も、私達は再会を果たさずにうまくやってきた。

会いたかったわよ。今すぐに、何度も何度も会いに行こうって思う自分と闘ってた。
なのに何で、何の為にそこまでしたのかって。

もう、冬子ちゃんを自分だけの意思で逃げさせない為よ。
大人だけの事情じゃどうにも出来ないようにしたかった。

どんなに冬子ちゃんが嫌がったって、断ち切ろうとしたって、そこに違う想いが加われば、そうはいかないでしょう。

そう。あなた達。
深春。まふゆちゃん。

あなた達は私の希望。
私の世界の全て。
そうなるまで、守り抜かなきゃいけなかったのよ。

それと、そうだったわね。
どうして私の名前を聞いた時、そんなに驚いていたのか。

単純な話よね。
冬子ちゃんの中で私と棗くんは結婚していない。
冬子ちゃんと棗くんが別れてからはずっと独り身で、この前会った“深春”は、自分の知らない女性との子どものはずだった。

冬子ちゃんは心の中で思ったはずよ。
深春は自分の娘の“妹なんだ”って。
その二人が何も知らないまま数奇な出会いを遂げてしまった。

それがまさか、私の娘だったなんて。
自分の人生から消えたと思っていた女。
“棗 深春“の母親が私だったなんて。
本当に、事実は小説よりも奇なり、よね。

ふぅ。だいぶ話したわね。
そろそろ疲れたでしょう。
…分かったわ。ちゃんと最後まで話すわ。
あとどれくらいかかるかしら…。お腹空かない?

そんなことどうでもいいって?もう、深春ったら。
まふゆちゃんとお父さんは大丈夫?
…そう。

冬子ちゃんの言動についてはこんなところ。
話を戻していいかしら?
このことについて、また触れることもあると思うわ。