やわく、制服で隠して。

始めに言っておくわね。

あの元家庭教師と主人に繋がりがあったのは本当に偶然だった。
深春から連絡があった時は心から驚いたわ。

深春とまふゆちゃんの繋がりには気付いていたのかって?それも追い追い話すわ。

…あの日、私は立ち会っていないからこの目で見ることは出来なかったけれど、冬子ちゃんったら取り乱しているようで、実は平然とあなた達の前で“他人のフリ”の演技をやってのけたのねって感心したわ。

主人と冬子ちゃんのご主人が電話で話した後、夜も遅くに冬子ちゃんから電話があったわ。
その時、私は寝室のベッドの中、主人の横で二人の会話を聞いていたわ。

冬子ちゃんは気付いていなかったようだけど、スマホをスピーカーにしていたから音声は筒抜けだった。

「棗くん。あなたよね。」

「あぁ。冬子、本当に久しぶり。相変わらず綺麗だね。それに…まふゆちゃんも君にそっくりだ。」

「…連絡先、変わっていなかったのね。」

「ケータイからスマホには変わったけれどね。」

「…そうね。ねぇ、仕組んだの?」

「いいや。」

「嘘。じゃなきゃ有り得ない。」

「僕も驚いてるんだ。」

「…あの子は?」

「あの子?」

「…。」

「冬子。“あの子”は居ないよ。冬子と別れてからは、会っていない。深春はあの子の子どもじゃないよ。」

主人は嘘をついた。
私とは一緒になっていない。
冬子ちゃんと別れてから出会った女性との子だって。
本当に最低なことをした。償っても償いきれないって。

「でも娘…、私の娘とそちらの娘さん、同級生じゃない。同時に妊娠させちゃって逃げたんじゃないの?」

「冬子。意地悪言わないでくれ。いや…そういうことを実際に僕はやったんだ。愛していたのに…。」

そうやって懺悔の言葉を並べ立てて、冬子ちゃんの心を掻き乱して、けれどジワジワと惹きつけていた。