「冬子ちゃんが妊娠してるって…?」
「僕の子どもをね。」
「どうして?」
「どうしてって…、まさかコウノトリが運んでくるなんて、思っていないだろう?」
棗くんはクスクス笑って私を見ていたわ。
どうしてこの状況で笑っていられるのかしら?
すごくおかしなことになっているって自覚はあるのかしら?
あぁ…、“おかしい”と認識できる冷静さが、私にもあったのねなんて思ってた。
棗くんは当たり前のように教えてくれたわ。
一年くらい前から冬子ちゃんと恋人関係にあったこと。
私に“地元に帰っておいで”って電話をくれた日に、冬子ちゃんの妊娠が発覚していたこと。
その日、冬子ちゃんは妊娠三ヶ月だと棗くんに告げた。
更に私が退職するまでに三ヶ月が過ぎた。
その頃にはもう、妊娠六ヶ月になっていた。
もちろん堕胎はしていない。冬子ちゃんは最初から産むつもりだった。
そして当然、棗くんと一緒に育てるつもりだった。
けれど棗くんは、冬子ちゃんを捨てた。
三ヶ月前、私に電話をくれた夜に。あっさりと。
棗くんはとっくに退職していたし、生活に困っていたわけでもなかったから、冬子ちゃんやその両親、自分の両親や友人達にどれだけ糾弾されても、棗くんは一切構わなかった。
あら、まふゆちゃん、なぁに?
おかしい…って何が?
主人と冬子ちゃんが…あぁ、そうね。
あなたと深春の前で、二人は会っているのに、知り合いだったなんておかしい。
そうよね。その時は何も言っていなかったでしょう?
冬子ちゃんね、気付いていたわよ。
気付かないわけがないじゃない?
“棗くん”は整形したわけじゃないし、棗くんは棗くんのまま。
そりゃあ歳は取ったけれど、そんなに変わってはいないわ。
冬子ちゃん、気付いていたのよ。
あの“家庭教師の事件”の日。
あの後すぐにね、主人のスマホに連絡があった。
冬子ちゃんからよ。
え?なぁに?
じゃあなんで、私の名前を聞いた時、私が深春の母親だって知った時、初めて聞くみたいな驚き方をしたのかって?
もう。まふゆちゃんってばせっかちね。
順番に、ちゃーんと話してあげるから。
まずは、そう。
家庭教師事件の話からね。
これが済んだら話を戻して、“私と冬子ちゃんの物語“の続きを話すわね。
「僕の子どもをね。」
「どうして?」
「どうしてって…、まさかコウノトリが運んでくるなんて、思っていないだろう?」
棗くんはクスクス笑って私を見ていたわ。
どうしてこの状況で笑っていられるのかしら?
すごくおかしなことになっているって自覚はあるのかしら?
あぁ…、“おかしい”と認識できる冷静さが、私にもあったのねなんて思ってた。
棗くんは当たり前のように教えてくれたわ。
一年くらい前から冬子ちゃんと恋人関係にあったこと。
私に“地元に帰っておいで”って電話をくれた日に、冬子ちゃんの妊娠が発覚していたこと。
その日、冬子ちゃんは妊娠三ヶ月だと棗くんに告げた。
更に私が退職するまでに三ヶ月が過ぎた。
その頃にはもう、妊娠六ヶ月になっていた。
もちろん堕胎はしていない。冬子ちゃんは最初から産むつもりだった。
そして当然、棗くんと一緒に育てるつもりだった。
けれど棗くんは、冬子ちゃんを捨てた。
三ヶ月前、私に電話をくれた夜に。あっさりと。
棗くんはとっくに退職していたし、生活に困っていたわけでもなかったから、冬子ちゃんやその両親、自分の両親や友人達にどれだけ糾弾されても、棗くんは一切構わなかった。
あら、まふゆちゃん、なぁに?
おかしい…って何が?
主人と冬子ちゃんが…あぁ、そうね。
あなたと深春の前で、二人は会っているのに、知り合いだったなんておかしい。
そうよね。その時は何も言っていなかったでしょう?
冬子ちゃんね、気付いていたわよ。
気付かないわけがないじゃない?
“棗くん”は整形したわけじゃないし、棗くんは棗くんのまま。
そりゃあ歳は取ったけれど、そんなに変わってはいないわ。
冬子ちゃん、気付いていたのよ。
あの“家庭教師の事件”の日。
あの後すぐにね、主人のスマホに連絡があった。
冬子ちゃんからよ。
え?なぁに?
じゃあなんで、私の名前を聞いた時、私が深春の母親だって知った時、初めて聞くみたいな驚き方をしたのかって?
もう。まふゆちゃんってばせっかちね。
順番に、ちゃーんと話してあげるから。
まずは、そう。
家庭教師事件の話からね。
これが済んだら話を戻して、“私と冬子ちゃんの物語“の続きを話すわね。



