棗くんは同年代の中ではかなり良いマンションに住んでいたわ。
八畳ワンルームの私の部屋とは大違い。
実家では何不自由なく生活させてもらって、仕送りだってしてもらってた。
でも特別裕福な家庭だったわけではない。
仕送りすることは、楽なことでは無かったと思うわ。
それなのにこんなにあっさり親子の縁を切ってしまったって、さすがの私も少し胸が痛んだ。
それでも悪いのは分からず屋の両親だって、何度も自分に言い聞かせていたわ。
棗くんのマンションの一室は、紛れもなく“家”だった。
私が住んでいたのは“部屋”だったけれど、ここは立派な家だ。
同じ高校を卒業して、しかもこの人は冬子ちゃんみたいなマドンナよりも、他のどんな優秀な女性よりも私のことが好きなのに、こんなにも人間のレベルが違うんだと思い知らされて、ちょっと惨めな気持ちにもなっていたわ。
でもね、それでもメンタルを保っていられたのは、どうしてだと思う?
ね、深春、分かるかしら?
…ううん。深春がその答えを当ててしまうと…、それはとても悲しいことね。
どうして正気でいられたか。
それはね、この人は…お父さんは、人間として、立派なクズだったからよ。
八畳ワンルームの私の部屋とは大違い。
実家では何不自由なく生活させてもらって、仕送りだってしてもらってた。
でも特別裕福な家庭だったわけではない。
仕送りすることは、楽なことでは無かったと思うわ。
それなのにこんなにあっさり親子の縁を切ってしまったって、さすがの私も少し胸が痛んだ。
それでも悪いのは分からず屋の両親だって、何度も自分に言い聞かせていたわ。
棗くんのマンションの一室は、紛れもなく“家”だった。
私が住んでいたのは“部屋”だったけれど、ここは立派な家だ。
同じ高校を卒業して、しかもこの人は冬子ちゃんみたいなマドンナよりも、他のどんな優秀な女性よりも私のことが好きなのに、こんなにも人間のレベルが違うんだと思い知らされて、ちょっと惨めな気持ちにもなっていたわ。
でもね、それでもメンタルを保っていられたのは、どうしてだと思う?
ね、深春、分かるかしら?
…ううん。深春がその答えを当ててしまうと…、それはとても悲しいことね。
どうして正気でいられたか。
それはね、この人は…お父さんは、人間として、立派なクズだったからよ。



