“八月十日”
“八月十一日”
空白。
空白。
空白。
“八月十五日。
冬子ちゃんに会いたい。”
“八月十六日。
やっぱり冬子ちゃんのワンピース、もういらないのなら貰ってくれば良かったな。”
“八月二十日。
なんと…!なんとなんと!
夜、冬子ちゃんとご両親が私の家に来たの!
ソファに座ってゆったりと構えている冬子ちゃんのご両親は余裕たっぷりでとても素敵なのに、うちの親は二人ともオドオドしちゃって格好悪い。
恥ずかしいったらありゃしない。
「ご用件は?」って父がオドオドしっぱなしで聞いたら、冬子ちゃんのお父さん、「娘さんを冬子に近付けさせないで頂きたい。」ですって。
冬子ちゃんはお母さんに肩を抱かれて俯いて、鼻をすすってた。
事情を知らない母が、「何故ですか」って聞いたら、冬子ちゃんのお母さんが、今まで私が冬子ちゃんにしてきたことをまくし立てた。
何度も家にやってきたり、しつこく電話をしたり、ゴミを漁ったりしたことも。
私のせいで冬子ちゃんは腕に迷い傷まで作ってしまったんだって、ギュッて冬子ちゃんの真っ白い腕を掴んで、私達親子に見せつけてきた。
白くてすべすべな腕に、まだ新しそうな傷痕がスッと何本か入っている。
「きれい」。
そう言ったら冬子ちゃんのお母さんは、私にグラスに入ったジャスミンティーをぶっ掛けた。
母が「キャーッ!」って叫んで、父が「何をするんですか!」って怒鳴った。
冬子ちゃんのお父さんはそれでも冷静に落ち着いていて「これはこれは。うちの者が申し訳ない。でもね、洗えば元通り。冬子は違う。だから大目に見てくださいよ。」って言った。
ちょっとヒステリックになったり、すぐ人に飲み物をかけるところ、これって遺伝なの?
冬子ちゃんにも欠点ってあるんだね。
でもそういうところも愛おしい。
私の為に感情を動かしてくれるんだもの。
愛してるわ。
だからわたし、そのまま言ってあげたの。
「私は冬子ちゃんを愛してる。ただ傍に居たいだけなの。出会った時からずっと、冬子ちゃんだけを見てた。離れるなんて無理」って。
冬子ちゃんのお母さんは「あなた、病気なんじゃないの!?」って叫んでた。
冬子ちゃんが「もう限界。お願いだから辞めて欲しい」って言って、家を飛び出していっちゃった。
冬子ちゃんのお母さんも後を追っていった。あのおばさんはすごく目障りだったから居なくなってくれて本当に良かった。
残された冬子ちゃんのお父さんが言った。
「とにかく、必要以上の関わりを持たないでください。同じ教室に居れば一切関わりを持たないというのは難しいでしょうが、決して二人きりにはならないように。冬子は学級委員長ですし、夏休みが終われば卒業まであっという間だ。進路も有名大学にと決めています。このことが問題になって冬子の経歴に傷でもつけば困りますからこちらからは問題にしません。そちらにとっても好条件でしょう」って。
父も母もペコペコ、ペコペコ頭を下げて、申し訳ない、申し訳ないって繰り返してた。
冬子ちゃんのお父さんは帰り際ににっこり笑って、私に「君もそんなんじゃ幸せになれないよ」って言った。
どうして?
私は冬子ちゃんを愛せるだけで最高に幸せ。
冬子ちゃんが私のことで頭をいっぱいにしてくれるだけで、これ以上の幸せなんて無い。
なんでみんな分かってくれないの?
こんなにこんなに愛してるのに。
こんなに!愛してる!
愛してる愛してる愛してる愛してる愛してるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてる”
“八月十一日”
空白。
空白。
空白。
“八月十五日。
冬子ちゃんに会いたい。”
“八月十六日。
やっぱり冬子ちゃんのワンピース、もういらないのなら貰ってくれば良かったな。”
“八月二十日。
なんと…!なんとなんと!
夜、冬子ちゃんとご両親が私の家に来たの!
ソファに座ってゆったりと構えている冬子ちゃんのご両親は余裕たっぷりでとても素敵なのに、うちの親は二人ともオドオドしちゃって格好悪い。
恥ずかしいったらありゃしない。
「ご用件は?」って父がオドオドしっぱなしで聞いたら、冬子ちゃんのお父さん、「娘さんを冬子に近付けさせないで頂きたい。」ですって。
冬子ちゃんはお母さんに肩を抱かれて俯いて、鼻をすすってた。
事情を知らない母が、「何故ですか」って聞いたら、冬子ちゃんのお母さんが、今まで私が冬子ちゃんにしてきたことをまくし立てた。
何度も家にやってきたり、しつこく電話をしたり、ゴミを漁ったりしたことも。
私のせいで冬子ちゃんは腕に迷い傷まで作ってしまったんだって、ギュッて冬子ちゃんの真っ白い腕を掴んで、私達親子に見せつけてきた。
白くてすべすべな腕に、まだ新しそうな傷痕がスッと何本か入っている。
「きれい」。
そう言ったら冬子ちゃんのお母さんは、私にグラスに入ったジャスミンティーをぶっ掛けた。
母が「キャーッ!」って叫んで、父が「何をするんですか!」って怒鳴った。
冬子ちゃんのお父さんはそれでも冷静に落ち着いていて「これはこれは。うちの者が申し訳ない。でもね、洗えば元通り。冬子は違う。だから大目に見てくださいよ。」って言った。
ちょっとヒステリックになったり、すぐ人に飲み物をかけるところ、これって遺伝なの?
冬子ちゃんにも欠点ってあるんだね。
でもそういうところも愛おしい。
私の為に感情を動かしてくれるんだもの。
愛してるわ。
だからわたし、そのまま言ってあげたの。
「私は冬子ちゃんを愛してる。ただ傍に居たいだけなの。出会った時からずっと、冬子ちゃんだけを見てた。離れるなんて無理」って。
冬子ちゃんのお母さんは「あなた、病気なんじゃないの!?」って叫んでた。
冬子ちゃんが「もう限界。お願いだから辞めて欲しい」って言って、家を飛び出していっちゃった。
冬子ちゃんのお母さんも後を追っていった。あのおばさんはすごく目障りだったから居なくなってくれて本当に良かった。
残された冬子ちゃんのお父さんが言った。
「とにかく、必要以上の関わりを持たないでください。同じ教室に居れば一切関わりを持たないというのは難しいでしょうが、決して二人きりにはならないように。冬子は学級委員長ですし、夏休みが終われば卒業まであっという間だ。進路も有名大学にと決めています。このことが問題になって冬子の経歴に傷でもつけば困りますからこちらからは問題にしません。そちらにとっても好条件でしょう」って。
父も母もペコペコ、ペコペコ頭を下げて、申し訳ない、申し訳ないって繰り返してた。
冬子ちゃんのお父さんは帰り際ににっこり笑って、私に「君もそんなんじゃ幸せになれないよ」って言った。
どうして?
私は冬子ちゃんを愛せるだけで最高に幸せ。
冬子ちゃんが私のことで頭をいっぱいにしてくれるだけで、これ以上の幸せなんて無い。
なんでみんな分かってくれないの?
こんなにこんなに愛してるのに。
こんなに!愛してる!
愛してる愛してる愛してる愛してる愛してるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてる”



