やわく、制服で隠して。

私ね、冬子ちゃんがストーカー被害に遭ってるんじゃないかってピンと来たの。

きっと付きまとわれていて、さっき玄関の外で話してる時、私の背後でストーカーの影を見たのかもしれない。
あんなに怯えるなんて尋常じゃないもの。

おうちの中に入っても、冬子ちゃんは「嫌!」とか言いながら、「助けて!」って大きな声を出して、悲鳴を上げそうになっていた。

だから私、冬子ちゃんにキスをして、口を塞いであげたの。

「大丈夫だよ。私が居るから。私、冬子ちゃんのこと愛してるのよ。私が守ってあげる。」

くちびるを離してそう言ったら、冬子ちゃん、私の頬を思いっきり引っぱたいて、「死ね!」って言った…。

死ね?死ねって言ったの…?
ねぇ冬子ちゃん。
聞き間違いじゃなくて、本当に死ねって言ったの?

そのまま蹴り飛ばされて、玄関でうずくまっていたら、ガチャガチャって冬子ちゃんは玄関の鍵とドアを開けて、私の腕を引っ張って、外に引きずり出した。

バタンッてドアの閉まる音と、鍵が掛かる音が内側からした。

私はわけが分からなくて、しばらくそこにうずくまっていた。
落ち着いて立ち上がった頃には、あぁ、冬子ちゃんのワンピース、おうちの中に置いてきちゃったって後悔してた。”

ここまで読んで、深春が「ごめん。」って席を立った。

「ちょっと…トイレ行ってくるね。」

「うん…。」

すごく顔色が悪い。
そりゃそうだよね。私もさっきから何度も生唾を飲み込んでいる。

本当はこれ以上先を読むメンタルも、もう無いけれど、それでも「知らなきゃいけない」という、勝手に課した義務感で、またページをめくった。