“八月九日。
昨日、また冬子ちゃんのおうちに行った。
本当はその前の日に行きたかったけれど、冬子ちゃんの愛情表現に気付いたのが遅い時間だったから無理だった。
冬子ちゃんはおうちに居なくて、インターホンを押しても誰も出て来なかった。
ちょっとだけ周りを歩いていたら、その辺一帯のゴミを集める置き場があった。
ほとんど全部が透明の袋だから中身が丸見え。
本当に、プライバシーの侵害よね。
その中のどれが、冬子ちゃんのおうちのゴミかすぐに分かった。
だって、あのワンピースが捨てられていたんだもの。
スカートの部分だけが見えていたのなら気付かなかったかもしれない。
でも袋の中で見えていたのは、レースで特徴的な刺繍をされた胴体部分だったの。
冬子ちゃん。どうしてそんなことしたの?
どうして?
悲しくて悲しくて、私はゴミ袋からワンピースを救出して、冬子ちゃんのおうちに走って戻ったの。
そしたらちょうど冬子ちゃんが帰ってきてるところだった。
コンビニにでも行っていたのかな。
ビニール袋を腕に下げて、黄色のタンクトップに薄い色のデニムのハーフパンツを履いた冬子ちゃんの後ろ姿に呼び掛けた。
「冬子ちゃん!」って呼んだ私に振り返った冬子ちゃんは、私を上から下まで何度も見て、何も言ってくれなかったの。
だから私は冬子ちゃんにワンピースを差し出して「間違って捨てちゃったの?」って聞いた。
冬子ちゃんは何でか分かんないけど、泣き出しちゃって、「嫌!嫌!」って繰り返してた。
ポケットを探っておうちの鍵を取り出して、一生懸命開けようとしていたけれど、冬子ちゃんはうまく開けられないまま、鍵を落としてしまった。
それから私、ピンと来たの。
だから冬子ちゃんが落としてしまった鍵を拾って、代わりに開けてあげたの。
ドアは外からは引いて開けなきゃいけないから、しゃがみ込んでしまった冬子ちゃんの腕を引っ張って立たせてから、ドアを開けて、無理矢理おうちの中に押し込んだ。
それから私も中に入って、内側から鍵とチェーンを掛けた。
冬子ちゃんは私を見ながら息を荒くしていた。
焦点が定まっていなくてすごく心配になっちゃった。
後ろに後退りしながら、玄関と廊下の段差にぶつかって、冬子ちゃんは転んでしまったの。
私は冬子ちゃんに近付いて、覆い被さるようにして言ってあげたの。
「大丈夫だよ」って。
昨日、また冬子ちゃんのおうちに行った。
本当はその前の日に行きたかったけれど、冬子ちゃんの愛情表現に気付いたのが遅い時間だったから無理だった。
冬子ちゃんはおうちに居なくて、インターホンを押しても誰も出て来なかった。
ちょっとだけ周りを歩いていたら、その辺一帯のゴミを集める置き場があった。
ほとんど全部が透明の袋だから中身が丸見え。
本当に、プライバシーの侵害よね。
その中のどれが、冬子ちゃんのおうちのゴミかすぐに分かった。
だって、あのワンピースが捨てられていたんだもの。
スカートの部分だけが見えていたのなら気付かなかったかもしれない。
でも袋の中で見えていたのは、レースで特徴的な刺繍をされた胴体部分だったの。
冬子ちゃん。どうしてそんなことしたの?
どうして?
悲しくて悲しくて、私はゴミ袋からワンピースを救出して、冬子ちゃんのおうちに走って戻ったの。
そしたらちょうど冬子ちゃんが帰ってきてるところだった。
コンビニにでも行っていたのかな。
ビニール袋を腕に下げて、黄色のタンクトップに薄い色のデニムのハーフパンツを履いた冬子ちゃんの後ろ姿に呼び掛けた。
「冬子ちゃん!」って呼んだ私に振り返った冬子ちゃんは、私を上から下まで何度も見て、何も言ってくれなかったの。
だから私は冬子ちゃんにワンピースを差し出して「間違って捨てちゃったの?」って聞いた。
冬子ちゃんは何でか分かんないけど、泣き出しちゃって、「嫌!嫌!」って繰り返してた。
ポケットを探っておうちの鍵を取り出して、一生懸命開けようとしていたけれど、冬子ちゃんはうまく開けられないまま、鍵を落としてしまった。
それから私、ピンと来たの。
だから冬子ちゃんが落としてしまった鍵を拾って、代わりに開けてあげたの。
ドアは外からは引いて開けなきゃいけないから、しゃがみ込んでしまった冬子ちゃんの腕を引っ張って立たせてから、ドアを開けて、無理矢理おうちの中に押し込んだ。
それから私も中に入って、内側から鍵とチェーンを掛けた。
冬子ちゃんは私を見ながら息を荒くしていた。
焦点が定まっていなくてすごく心配になっちゃった。
後ろに後退りしながら、玄関と廊下の段差にぶつかって、冬子ちゃんは転んでしまったの。
私は冬子ちゃんに近付いて、覆い被さるようにして言ってあげたの。
「大丈夫だよ」って。



