やわく、制服で隠して。

“八月七日。
一晩経って気付いたんだけど、昨日の冬子ちゃんの行動は私の為だったんだ。
きっとあのワンピースは私には似合っていなかったのね。そう言ってしまえば私が傷つくと思って、自分が悪者になることでワンピースを着させないようにしたんだ。

だってあのワンピースは冬子ちゃんに本当によく似合っていた。
あれは冬子ちゃんの為の物だ。

昨日は洗濯してもシミが全然取れなくて悲しかったけれど、冬子ちゃんが私の為にしてくれたんだと思うと愛おしくなってきた。
冬子ちゃん。私を汚してくれてありがとう。”

次のページをめくろうとすると、ページの裏側につるりとした感触があった。
めくってみると、薄くて透明の、ビニールのような物がノートの一ページに綺麗に貼られていて、その下には大きく茶色の染みが広がる布が貼られている。

A5サイズのノートより少しだけ小さく切り取られた布と、それを保護するように覆われた透明のシート。

元は真っ白の、ワンピースだったのだろう。
大きく広がる茶色の染みはフチが濃くなっていて、中心にいくほどに薄く広がっている。

ノートの隅には“冬子ちゃんの愛情”と書かれている。

嬉しそうなハートマークやニコニコマークも書いてあるのに、その次のページには“八月八日”と日付だけが書かれていて、ページ一面、ボールペンでぐちゃぐちゃに塗り潰されている。

よっぽどの筆圧でぐちゃぐちゃに書き殴ったのだろう。
所々破けていたり、ページがよれたりしていた。