やわく、制服で隠して。

“八月五日。
冬子ちゃんのおうちに電話をかけたけれど、親が出て、冬子ちゃんは体調が悪いからって代わってくれなかった。
心配でおかしくなりそう。”

“八月六日。
今日は乗り継ぎも大成功。
バスを降りてすぐに八百屋さんがあったからお見舞いにマンゴーと苺を買った。

たまに吹く風がワンピースの裾を舞い上がらせる。
そう!冬子ちゃんとお揃いのワンピース!

この前、冬子ちゃんが着てたやつ。
お友達と好きな服屋さんの話をしていたのを聞いたことがあったから、その日の帰りに早速行ってみたらビンゴ!

お店もワンピースもすぐに見つかった。
学校の近くのお店だけど、たまに一人で下校している時はこういう所でお買い物してたのかな。
誘ってくれれば良かったのに。

でも制服で寄り道している所を見回りの先生に見られたら大変。補導されて反省文だよ。

店員さんは私がワンピースを見ていたら「新作ですよ」って教えてくれた。
さすが冬子ちゃん。情報が早くて時代の最先端って感じがする。

勉強ができて、運動も何でもやってのける。
先生達からの評判もいい。
好きな要素しかない。

この前と同じで冬子ちゃんはやっぱりおうちの中には入れてくれなかったし、思っていたよりも元気そうだった。
私の顔を見るなりおうちの中に戻っちゃったけれど、今日はすぐに戻ってきてくれた。

冬子ちゃんが戻ってきてくれたと同時に私のワンピースは茶色く染まって、コーヒーの香りがした。

空っぽになったグラスを握り締めて、冬子ちゃんは私をニラんでた。

冬子ちゃんに触れようとしたら体を強く押されて私は転んでしまった。
冬子ちゃんは「帰って!」って言った。

転んだ拍子にお見舞いのフルーツが地面とぶつかって、マンゴーがちょっと潰れちゃった。
冬子ちゃんはどうして怒ってしまったんだろう。”