差し伸べられた封筒には、防水の加工がされているようだった。そのことに気づくのは少し後で、その前に封筒の分厚さが目に止まっていた。

『お金が入ってるのかもね』と悪魔が囁くのに対して、『長々と手紙が入ってるのかも』と天使が言う。

「開けていい?」と呟くと、片割れがコクっと頷いた。

中身を開けると、そこには大量の紙が入っていた。『やっぱりね!』と天使が自慢げに言うと、悪魔が『まだなにか入ってる』と希望に溢れた声で囁いた。

中に入っていたのはキャッシュカードだった。結論、どちらも合っていたのだ。

便箋の中身を見てみると、達筆な楷書でつらつらと文字が綴ってある。中身はこうだ。

拝啓、双子を預かりし者へ
これを書いている私は、その双子の育て親であり研究者だ。
この双子は、私が研究のために使った被検体である。
この双子は、投薬と実験が重ねられ、もう使い物にならない。
双子を預かりし者へ。この双子を育ててくれ。警察には伝えないで欲しい。この双子が囚われてしまう。
兄の方にはある者の遺伝子を。弟の方には神が見えるように改造してある。そして、話し方は教えていない。覚えさせたければ覚えさせてやってくれ。
この双子が更生できるように、尽くして欲しい。
この子の誕生日は12月26日、キャッシュカードの暗証番号は誕生日だ。
健闘を祈る。

便箋以外の紙には、双子の傷の状況、性格、健康を保つ処方箋の名前、育て方などが載っていた。

驚いた顔で双子を見つめると、双子は怯えていた。きっと、また実験を受けさせられるのかと言う意味の怯えだったのだろう。

泣きじゃくる片割れと、今にも泣き出しそうな片割れの頭を撫でてやる。

この説明書を読む限り、泣きじゃくる方が弟、頼もしい方が兄であろう。

私より小さな体で弟を守ってきたのか、人体実験を受けて、こんなにもか弱くなってしまったのか。私はこんなにも胸が締め付けられたのは久しぶりで、とても悲しい気持ちに浸った。

「…寒いでしょ。お風呂入ろう」

少しだけ安心してくれたのか、双子は素直に応じてくれた。